武庫川市民学会設立の経緯

兵庫県南東部を流れる武庫川では,治水の一環として中流部に県営治水ダム建設が計画されました。しかし,市民による反対運動が起ったため,新河川法に基づき市民の意見を反映させる武庫川流域委員会(2004)が県によって設置され,行政,専門家,市民の間で6年半にわたり議論が行われました。

 その中で,流域委員会はダムに頼らない総合治水の方向性を「提言書」(2006)にまとめました。県もこれを尊重する方向へと方針を転換しましたが,この「提言書」の中には,市民の意見を取り入れるだけではなく,流域市民自体が参画し連携することなくして真の川づくり・まちづくりはできないとの観点が盛り込まれ,流域市民による「流域自治」を具現する組織として,「武庫川流域圏会議」と「武庫川学会」の構想が打ち出されました。

 この「提言書」は,その後の討議を経て,県がまとめた「武庫川水系河川整備基本方針」(2009)の骨格となり,「基本方針」を基とし国も同意した「武庫川水系河川整備計画」(2011)において,「流域連携」の項目の中に「参画と協働」による武庫川づくりが明示されました。

この「参画と協働」の精神に則り「流域自治」を実践するために,流域委員会の専門委員メンバーを中心に結成された「武庫川づくりと流域連携を進める会(武庫流会)」(2007)等が核となり,「武庫川流域圏ネットワーク」(2011)が設立されました。そして,二つ目の組織として「武庫川市民学会」が誕生しました。 

 このように,「提言書」が構想した武庫川流域連携の骨格となる「武庫川流域圏会議」と「武庫川学会」は,「武庫川流域圏ネットワーク」と「武庫川市民学会」と言う形で結実しました。「武庫川市民学会」は流域連携の骨格となる両輪の組織の一つであり,流域連携を理論的に考えるためのプラットフォームの役割が期待されています。

       武庫川市民学会設立趣意書

 武庫川の流域圏人口は140万人,下流部想定氾濫区域内だけでも人口107万人で社会資産は18兆円。武庫川は河川として決して大きいとは言えませんが,想定氾濫区域内の人口・資産はいずれも全国第10位の重要な河川です。当然,流域の市民は武庫川と大きく関っており,多くの活動グループが多岐にわたり活動を進めていることはよく知られています。さらに,「武庫川流域圏ネットワーク」の設立(20117月)により,一層多くの人々の連携活動ができるようになりました。

このような活動環境で,武庫川流域圏の自然現象,社会現象について独自の学習・調査・研究をされている人も多いのではないでしょうか。「武庫川市民学会」では,情報の伝達や共有,種々の行動に参加するだけでなく,市民自ら学習・調査・研究した結果を専門的な見地からも考察し,その科学的な知見を他の市民に伝え,より多くの市民が武庫川を科学的に理解することによって,人と自然が共生する豊かな武庫川の川づくり・まちづくりを推進する場とすることを目的としています。

「武庫川市民学会」は次のような仕組みで事業を行います。

1)登録制によりどなたでも会員になっていただけます。年会費は無料です。

2)事業の一つの研究発表会では,会員は学習・調査・研究の成果を発表できます。

3)同様に,学会誌において,会員が学習・調査・研究した成果のまとめを公表できます。

4)学会の経費は,基本的に研究発表会の参加費,学会誌の投稿料,寄付金等によって賄います。

5)その他詳細な事項については学会規約に従うものとします。

 以上のように,「武庫川市民学会」は市民による市民の学会です。この趣意にぜひご理解をいただき,本学会の設立にご協力をいただきますようお願い申し上げます。

 

「武庫川市民学会」設立準備委員会

委員長 村岡浩爾(大阪大学名誉教授)